奄美を感じる / 奄美コラム たまがてぃ! /
ゆいわくツアー

3月4日から3月7日まで、大雪の東京から104年ぶりの積雪の奄美へと、大荒れの天候に見舞われたものの、ともだち100人プロジェクトと銘打っての初の奄美旅 行を無事に終えることができました。

集まったメンバーは、八月踊り同好会「十五夜会」の仲間でシマ唄修行中の女性、 三味線教室の兄弟子で私と同じ奄美二世の男性、そして知恵市場コミトンでの長年の友人で奄美発体験のToshiさん家族。個性豊かなメンバーが集まっての奄美旅行は、まさにゆいわく(共同作業)の旅となりました。

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■背中を押してくれた同行メンバー
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今回のゆいわくツアーの収穫のひとつは、私の呼びかけに共感して一緒に行動してくれる人がいるのだという実感を持てたことです。

昨年末に「来年は一緒に奄美へ行く人を募ろう」と決めたものの、実行するとなると、いつ、誰に、何を、どうやって伝えればいいのやらわかりません。
もちろん、これまでに仲間と一緒に島を訪れたことは何度もあります。でも、それは奄美での行事に合わせてシマ唄仲間が自然に集まってのことで、私が企画してシマ唄仲間以外にも呼びかけようとするのは今回が初めてのこと。

昨年一年間で何度か島に通ってさまざまなことを体験するうちに、さらに「来年はこんなことをやってみたい、見てみたい!」と新たな意欲も湧いてきます。
そのような私個人の興味を旅行のテーマにしようと考えていて、その中のひとつが「春のフチ餅作り体験」。ところが、これも、いざ、同行者を募ろうとする段
階になってから「フチ餅作りに興味がある人っているのだろうか?」と不安になってしまい、実行するのを一日延ばしにしてしまう情けなさ。

誰でも知らないこと、新しいことへ挑戦する時は不安になるし、思った以上にエネルギーを必要とするものなのだと自分を慰めながら、いつもより半歩だけ新しいことに挑戦することにしました。つまり、日頃からよく顔を合わせていて、私が島にしょっちゅう行っていることをよく知っているシマ唄仲間にまず私の計画を話してみることにしたのです。

まず、八月踊り同好会の稽古の日に「春になったらフチ餅を作りに島に行こうと思っているのだけど興味ある?」と切り出したところ、すかさず一人が「行きま
す!」と即答。しかも、日程を決定できずにいた弱気な私の背中を押して「旅行に合わせて休みを取らないといけないから」とあっと言う間に日程まで決まったのでした。

弾みがついて今度は三味線教室で話してみると、ここでも「うん、行くよ」と即決した人が1名。

参加者2名が決定、しかも、唄者に三味線弾きという豪華メンバー。ここに奄美初体験の人が加わるとずいぶんおもしろい旅行になるだろうなと思っていた矢先にToshiさんから問い合わせのメール。なんというタイミング!こういうのを「神の引き合わせ」と言うのかもしれない、と同行メンバーの積極的な参加態度にすっかり勇気づけられて、カミ様までが応援してくれているような心強い気持ちになったのでした。

メンバーに勇気づけられたことはまだまだあります。

積極的でバラエティに富んだ参加者が集まったことで、このメンバーでの道行き自体が楽しくて充実したものになるだろうとは旅行の前から確信を持っていました。それでも、日頃から奄美のシマ唄に深く親しみ、1〜2度の奄美旅行の経験があるシマ唄仲間たちと、奄美初体験のToshiさんたちでは旅行に期待しているものが異なるのではないかと内心ちょっと心配していたのです。三泊四日間ずっと同じ行程は厳しいかもしれないと、全員で回るコースに加えて、島の友人にサポートを頼んで希望のコースを選択できるようにしようかなどと一人思案に暮れていました。しかし、そんな私の懸念もまったくの取り越し苦労でした。 フチ餅作り以外の希望を尋ねたところ、シマ唄仲間のひとりが有名なシマ唄として伝わる奄美のスーパーヒロイン「なべ加那」のお墓をお参りに行きたいと言う 以外に具体的なリクエストがありませんでした。

彼らは奄美旅行と言うよりも、私がアレンジして案内する旅行に大きな期待と信頼を寄せてくれていることをヒシヒシと感じました。この心地よいプレッシャー
を励みにして、私は新たにもうひとつの試みに挑戦を決めました。 それは島の採石場を見てもらうことです。

奄美大島と聞いて漠然と南の島のリゾートや動物の楽園の亜熱帯の森を期待して島を訪れる人がその光景を見たらきっと愕然とするでしょう。「こんな豊かな自然があるのに、島の人はなんと愚かしいことをするんだ!」と憤慨して、島の人たちはみんな環境意識レベルが低い人たちだと誤解してしまうかもしれません。 でも、メンバーたちが私に寄せてくれている信頼と期待は、彼らなら私の意図を理解してくれるはずだと確信するのに十分なものだったのです。
結果は私の期待通り。全員が「なぜ、こんなことが起こるのか?」と、採石場の背景にある、島を含めたすべての背景を理解しようとして、車の中で次から次へと質問攻めにあって、私は嬉しい悲鳴をあげたのでした。

また、長くなるので詳しくは書きませんが、旅行中にさまざまな場面で受けた質問の数々は、それまで私の中で漠然としていたことの輪郭を際立たせてくれるものでした。

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■結いの心の本質を教えてくれた島の人たち
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また、今回の旅行が大成功だった理由はなんと言っても、島の人たちが思いやり深い態度で旅行中のさまざまな場面でサポートをしてくれたことに尽きます。

メンバーのひとりはもともと航空チケットが同じ日程で取れなくて、私たちより一日早く奄美入りする予定でしたが、さらに、出発日の前日になって急な事情で帰りの日程を二日も早めることになってしまいました。ツアーと言っても、日程を合わせて一緒に行くだけで、基本的には個人旅行です。「一日くらいなら単独行動もいいよね。」と、彼女も私ものん気に構えていました。しかし、旅行中止も考えるほどの緊急事態の直後に旅行を強行するとなると事情が異なってきます。 気持ちが落ち着かないままでの単独行動はさすがに彼女も私も不安になりました。

私が事態を知った時点で既に夜の10時を回っていたのですが、島の知人に電話を入れて事情を伝えると彼はすぐに翌日のサポート依頼を快諾し、そして実行してくれました。

翌日の夜、つまり私の出発前夜ですが、「みどりさんとおともだちのおかげでとても楽しかった!」と弾んだ声の電話を受けてようやく安心したのも束の間、その夜からの大雪で私たちの飛行機が大幅に遅れる事態。

奄美空港に着いてすぐに彼女に連絡を入れると「空港にいますよ」と思いがけない返事。前日のサポートを頼んだ島の友人が飛行機の遅れを知って、一人で私たちの到着を待たなければならなくなった彼女を気遣って連絡を取り、空港まで一緒に迎えに来てくれていたのです。

しかし、さらにアクシデントは続きます。
事前に手配していたレンタカーが予約した内容と違う。6人が乗れる大きさの車を予約したはずでしたが、目の前に出てきたのはどれだけ詰めて座っても5人乗り。とても全員は乗れません。しかも、飛行機の到着遅れのためにレンタカー会社にかけ合う時間もありません。たまたま友人が迎えに来てくれていたので、とりあえず空港から名瀬まで分乗することにしましたが、その日の予定を終えてから交渉したのでは翌日に間に合いません。どうしたものかと思っていたら、また、別の友人が車を出して私たちに付き合ってくれることになりました。しかも一日中!

おかげで、翌日の午後には一行から離れてバスでひとり空港へ向かうはずだったメンバーも、友人の案内で飛行機の時間までたっぷりと島を楽しむことができました。

一足先に慌しく戻った彼女から、その日のうちに電話やメールで幾度かお礼の言葉が届きました。

無理をして旅行を強行すればかえって周囲に迷惑をかけてしまうかもしれないと、 誰よりも彼女自身が心配していたようです。それでも参加したのは、今回の旅行に、彼女がほんとうに何かを期待していたということなのでしょう。そして、期待にたがわず、彼女にとって、忘れられない、思い出深い旅行となったのは、島の友人たちが親身になって接してくれたおかげに他なりません。

旅行の間中、島の人たちの心配りにほんとうに助けてもらいました。
例えば、台風かと思うほどの強風が吹き荒れる悪天候だった二日目の午後。 奇しくもその日はフチ餅作りをすることになっていたので、行程に影響はなかったのですが、それでも宿から一歩も出られない私たちを気遣って古仁屋のシマ唄仲間がわざわざ訪ねてきて、宿のおばちゃんとともに島の話をメンバーに話してくれました。また、フチ餅作りの講師役を引き受けてくれた宿のおばちゃんは、私たちのスケジュールに合わせてフチ餅を作って持って帰れるように、私が頼んだ以上にきっちりと事前の準備を整えてくれていました。 その他にもまだまだたくさんあります。

私たちを迎え入れてくれた島の人たちの思いやり深い態度に、それまで何となくわかっていたつもりの「結いの心」のほんとうの意味を教えてもらったように思えます。「結いの心」とは「助け合いの精神」と説明されることが多いのですが、その本質は相手のことを互いに思いやりあう心。

以前から漠然と感じていたことですが、島の人たちはすばやく状況を判断し、相手が望むことを察して、それを言葉ではなく行動で示すのだと、強く心に残る旅行となりました。

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■フチ餅作りから見えてきた課題
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奄美の魅力は「結いの心」、そして私が企画するこれからの旅行も「ゆいわく」をテーマにしていこうと指針を持てたことは、この旅行の大きな成果でした。さ
らに、今後、ゆいわくツアーを継続していくための課題を発見できたことも収穫のひとつです。特に旅行のメインイベントであり、初の体験交流企画の試みであったフチ餅作りを企画して実行する過程でいくつかの課題に気がつきました。

まず、相手を思いやりあうコミュニケーションを継続して行うことはとても難しいということです。当然と言えば当然のことなのかもしれませんが、フチ餅作り
の手ほどきと準備を快く引き受けてくれた気のいい宿のおばちゃんとでさえ、意思疎通が難しいと感じることが度々ありました。

詳細を詰めていく段階になってくると、電話をする度に少しずつ話がかみあわなくなり始めたのです。

また、私もともだちを連れて行くとなると、ふだんなら「おばちゃんに任せておけば大丈夫」とわざわざ確認しないようなことでも、ひとつひとつ慎重に確認し
ていたので、話はよけいにややこしくなります。

そのうちにおばちゃんの機嫌がどんどん悪くなってきて、結局、島の友人におばちゃんとの連絡役を頼んで準備を進めました。長年、一人で旅館を切り盛りしてきたおばちゃんは、はっきりと物を言う人ですが、旅館の仕事に関してはほんとうに徹底したプロフェッショナルです。これまでも、一度伝えたことは忘れたことはありませんし、一言話せば意図を的確に把握してくれる人です。その、おばちゃんと、今回に限ってどうして話がうまく伝わらないのが不思議でなりませんでした。

でも、おばちゃんが準備してくれていた一切を見て、私の疑問は一気に消えました。私が考えていたよりも、もう一段階先まで下準備を整えていたのです。しかも、当初おばちゃんが言っていたよりも量が多い。おばちゃんは私たちの人数に合わせて材料の量を増やしたり、滞在予定から逆算してフチ餅を完成させて持って帰れるように、私の話から察して、すべて先回りして準備をしてくれていたのでした。電話で話がかみあわなかったのは、おばちゃんが先回りして配慮してくれていることがわからなかったためでした。また、おばちゃんの機嫌が悪くなっていったのは、私との意思疎通がうまくいかないことに、おばちゃんもまたストレスを感じていたというわけです。

さらに困ったのがお礼です。一日料理教室で講師に謝礼を払う感覚で最初から謝礼をするつもりだったのですが、これが予想していた以上に感情面でおおきな負担となることに気がつきました。おばちゃんは、商売でも何でもなくほんとうに厚意で引き受けたことです。実費以外にお金をもらうことなんて考えていませんし、おばちゃんのしてくれたことは私が渡そうとしている金額ではとても足りない。
そもそも、人の厚意に金額をつけられるはずがない。

「あんた、何ね、これ?おばちゃん、こんなのもらったことはないよ!」

そう言われて初めて、自分が人の厚意を安易に金銭に置き換えようとしていたのだと気がついたのですが、後悔先に立たず。言ってしまった言葉は飲み込めません。かと言って、あまりの恥ずかしさに次の言葉も出てこない。

私の気持ちを察してくれたのでしょう、「じゃあ、仏さんのお供えにもらっておこうかね。」とニコニコと言ってくれたので、ようやく救われた気持ちになった
のでした。

思いやりあい、察しあいながら行動することは、気持ちと気持ちのやりとりですから、そもそも金銭のやりとりとは相容れないことです。かと言って、1度や2度
なら相手の厚意へ感謝の気持ちだけで十分かもしれませんが、続けていくとなると実際に負担がかかっているのですから気持ちだけで成立するものでもありません。

では、最初から謝礼を払うことを決めておけばいいかというとそうでもありません。先に謝礼の話をすればおばちゃんは引き受けてくれなかったでしょう。それに、フチ餅を作る体験をしたいなら、観光客向けに商売でフチ餅作りを体験できるところもありますからそこへ行けばいいのです。

そのように考えてみると、私の本当の目的はフチ餅づくりそのものではなくて、島の人たちとの交流で、もっと言えば一緒に何かをしながらすごす家族のような時間だとわかってきました。観光客向けの体験コースのフチ餅作りではなく、「おばちゃんとのフチ餅作り」を選んだのはまさに「結いのこころ」を体験した
かったわけです。

このような体験交流を続けていこうとするならば、商売ではなく気持ちと気持ちのやりとりで成立する共同作業に加えて、互いに気持ちの負担なく謝礼を支払い受け取ってもらえるような仕組みが必要です。これはなかなか難しい課題です。

でも、来年の春までじっくりと時間をかけて挑戦してみようと思います。
この課題がクリアできれば、ともだち100人プログラムに共感して一緒に奄美旅行をする人たちに、私ならではの付加価値を提供して応えることができると思うからです。

さて、次のゆいわくツアーは早くも来週末です。
3月の旅行の時よりも、もう半歩前に踏み出してやちゃぼうねっとのメーリングリストで呼びかけました。大阪のシマ唄仲間がその友人を誘って参加します。彼女の参加表明も素早い反応だったので、ゆいわくツアーを続けていく自信になりました。

そして、その次はさらに半歩踏み出します。
ゆいわくランド」という会員ページを設けて、そこで、ともだち100人プロジェクトとゆいわくツアーに共感してくださる方に、
ゆいわくツアー情報をお伝えしていこうと思います。

今のところ年内で予定しているのは8月と9月です。豊年祭、アラセツ、シバサシと奄美のお祭りをたっぷり体験できるような企画を考えています。詳しくはゆ わくらんどでお話しますね!

 

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